アラユア



夕食の準備を終わらせて、アラゴを呼びにいく。
靴があったから帰ってきてるのは間違いないはずなのに、結局部屋から出てこなかった。

「アラゴー!ご飯出来た!」

外から声をかけるが返事がない。
寝ているのかな。

「……開けるぞ?」

一応断りをいれてからドアに手をかける。
電気が消えた真っ暗な部屋。
アラゴはベッドの上で頭から毛布を被り、壁に寄りかかるようにして蹲っていた。

「アラゴ…?ご飯だぞ。まったく、オレ一人にやらせるなよ」
「一人で出来たんだろ?じゃあいいじゃねぇか」

全て拒絶するような言い方。
ベッドに膝を乗せ、アラゴに近づく。

「……どうしたんだ?」
「みんなが、オレはユアンにふさわしくないって言うんだ」
「家族にふさわしいも何もあるか」
「オレがいなかったらユアンはもっと幸せになれるのにって」
「アラゴといるのがオレの幸せだよ」
「ユアンも本当はオレの事が嫌いなのに我慢してるって」
「大好きに決まってるだろ。そんなウソ信じるな」

ぽつりぽつりと零される言葉。
誰に何を言われたんだ。
くだらないことを吹き込んだ相手に苛立ちながら否定したが、逆効果だったようだ。
突然アラゴがオレに向かって飛び掛ってきた。

「お前はいいよな!オレより何でも出来て!!」
「アラゴ…!」
「本当はユアンもオレのことなんていらないと思ってるんだろ!!」

両腕をベッドに押さえつけられる。
伝わってくる小さな震えに胸が痛んだ。
アラゴが絞り出すような声で続ける。

「――オレがいなかったらもっと楽だっただろうに。残念だったな」

泣きそうに歪んだ笑顔。
毛布から出てきた姿は制服のままだった。
帰ってきた時からずっとこんな状態だったのか。
どうして気付いてやれなかったんだろう。
悔しく思いながら、アラゴの袖を掴んで引き寄せる。
バランスを崩して倒れ込んできたアラゴを抱きしめた。

「大丈夫。オレたちはずっと一緒だよ」
「……本当に?」
「ああ」
「絶対?本当に?」
「絶対。本当に」

子どもをあやすように背中を叩いてやると、目に見えてアラゴの緊張が解けていく。
よかった、落ち着いてくれたようだ。
アラゴが顔を上げ、ゆっくりとオレ近づいてきた。
お互いの唇が一瞬触れる。
予想外のことに驚いていると、我に返ったアラゴが慌てて身体を起こした。

「ちがっ…!今のは…!」
「安心したんだろ?アラゴは昔からキスする癖があるからな」
「そ、そう!」

尋ねるオレにアラゴが勢いよく頷く。
アラゴの頬に手をあてて今度はオレから唇をあわせた。
さっきのよりもずっと長いキス。
舌でアラゴの唇をつつくと素直に開かれた。
咥内の隅々まで触れて熱を確かめる。

「ああ、すごく安心する」

額をくっつけて笑うと、アラゴは顔を真っ赤にしてキスを返してきた。
再び舌を絡めながら貪り合う。
いいのかとアラゴの目が尋ねていた。
これ以上はスキンシップでは済まなくなる。
さすがにこの状況で何をされるか分からない程無知じゃない。

「いいよ」

口にしたのは一言。
それだけで空気が変わった。



***



「ごめん。さっきの、本心じゃない」
「わかってるよ」

オレの服のボタンを外しながらアラゴが謝ってきた。
でも全くの嘘でもないだろう。
あれもアラゴの気持ちの一つ。
そのくらいに今のアラゴは不安定になってる。
こんなことでアラゴをオレに繋ぎ止めておけるのなら、いくらでも構わない。

「――っ!」

乾いた場所に指が差し込まれ、ピリっとした痛みが走る
反射的に漏れた声にアラゴが顔をあげた。

「何か、ほぐすヤツ」

探してくると言って申し訳なさそうにアラゴがオレから離れようとする。
嫌だな。そんなもったいない事したくない。
アラゴの腕を掴んでを引き留める。

「手、貸して」

素直に差し出されたアラゴの右手の人差し指と中指を咥えた。
舌を動かす度にピクピクと反応するのが可愛い。
あ、目を瞑っちゃってる。本当に可愛い。
根元から指先まで丁寧に舐めてから解放するとアラゴの目が恐る恐る開かれた。

「……ん。これで少しは滑りが良くなるだろ」
「先に言えよ」
「気持ち良かった?」
「……うん。次はオレがユアンを気持ち良くするから」

再びアラゴがオレの中に指を潜り込ませる。
異物感はあるが、充分に濡れているおかげで先程より痛みはない。

「ユアン、力抜いて……」
「わかって――うぁっ!?」
「ごめんっ、痛かったか…?」
「違う…そこ…」
「うん」

突然襲った感覚に思わず身体が跳ねた。
途切れ途切れに話すオレに、アラゴが続きを促す。

「よく、わかんないんだ、けど、きもち、いい…んだと、思う」
「……うん」

アラゴは嬉しそうに微笑み、同じ言葉を口にした。
ソコだけに刺激を集中させて行為を再開する。

「っ!…ぁあっ…!アラゴ、ダメっ…マズい…っ!」
「なんで…?気持ちイイんだろ?」

シーツを掴んで必死に耐える。
不思議そうにアラゴが手を止めた。

「よすぎる、から…ダメ…アラゴ…もう、お前の」
「……わかった」

言い切る前に指が抜かれ、替わりにアラゴのモノが当てられる。
身体を押し開かれる鈍い痛み。

「……う、っ」
「つらい?大丈夫か?」
「大、丈夫…このまま…」

オレの言葉にアラゴは無言で身体を進めた。
じわじわと奥までアラゴが入り込んでくる。
時間をかけて、ようやくアラゴのモノを全部受け入れることが出来た。

「……ひとつ」
「うん、ひとつだな」

繋がったままアラゴを抱きしめる。
そのままキスをすると、中でアラゴのモノがビクンと脈打つのを感じた。
アラゴがゆっくりと腰を動かしだす。

「うっ…あっ…はぁっ…アラ、ゴ…!」
「ユアン…!ユアン…っ!」

徐々にスピードが上がっていく。
声が止まらない。
突かれる度に強く締めつけてしまい、そのせいでアラゴがまた更に強くオレを突き上げる。
快感の連鎖。
あっという間に追い詰められた。

「ユアンっ、イく…っ!」

限界を迎えたのはアラゴと同じ瞬間。
なんて幸せだろう。
一番深いところに注がれる熱を感じながら、アラゴに向って精を放った。