大晦日(学パロ)



オズと駅からの道を急ぐ。
待ち合わせ場所には既に白い息を吐きながらアラゴとセス君がいた。

「待たせてゴメン」
「いえ、きちんと連絡を頂いてましたから」

謝るオレにセス君がお気になさらずと返す。
相変わらず本当に良くできた子だ。

「むしろ僕たちが早すぎたんです。アラゴさんが雪に興奮してしまって」
「だって雪だぞ!?」

合流した途端にオズとじゃれだしていたアラゴが、セス君の言葉に動きを止めた。
もう降り止んでいるものの、先程まではらはらと続いていた雪は今も地面にうっすらと積もっている。
なるほど。だから妙にはしゃいでいるのか。

「ええ、そうですね」

こちらに駆け寄ってくるアラゴに、セス君が非の打ち所のない笑顔を向ける。
アラゴに剥ぎ取られかけたマフラーを巻き直しながらオズが追いかけてきた。

「もういいのか?」
「後で勝つ」

アラゴがオズのマフラーの両端を引っ張って逆に結び目を締めた。その宣戦布告を合図にオレたちは歩きだした。



大晦日というだけあってさすがに人が多い。
逸れては困ると思いオズの側に寄った。
見失わないように視線を前に向けると、アラゴとセス君が楽しそうに笑い合っている。
なんだか不思議だな。

「どうした?」

オズから心配されるほど二人を見つめてしまっていたらしい。大した理由じゃない。
ポケットに手を入れる。

「オレの前ではあんな笑い方しないからな。セス君だけだ」
「……おもしろいこと教えてやろうか?」

オズは一瞬驚いた様子を見せた後、耳元に顔を寄せてきた。
不自然な格好になったせいで歩みが少し遅くなる。

「オレ、たまにアラゴに嫉妬されてるの」
「は?」
「『ユアンはオレに見せない顏でオズに笑うからズルい』って」「な…」
「お前らホント双子だよな」
「オレ、そんな顏してるのか?」
「光栄なことに」
「……そうか」

虚を突かれるとはこの事だ。
アラゴの事も自分の事も全く気付いてなかった。
そうなのか。うわ。そうだったのか。
思いがけない情報に混乱していると、いつの間にか距離が開きすぎたらしい。
アラゴとセス君が人の流れに逆らって戻って来た。

「ユアン、どうした?顏が赤いぞ?」
「お前らが良く似てるって話」

恥ずかしさのあまり上手く言葉が出てこないオレの代わりに、オズがアラゴへ返事をする。頼むから詳しい説明を求めるなよ。詳しい説明をするなよ。それぞれへの願いが通じたのかアラゴは興味なさそうに唇を尖らせた。

「当然だろ。双子だぞ」

何の気負いもなく当然と言われたことが、魔法のようにオレを落ち着かせた。
アラゴからオレが、オレから見るアラゴみたいに見えているなら悪いことなんて何もない。
オレにもアラゴにも特別な相手がいるけど、オレたちが双子なのは変わらない。

「それより止まってると迷惑だから早く行こうぜ」

やはり当然のようにアラゴがオレの袖を握る。
こういうのも双子の特権だろうか。
オレは引かれるままアラゴと歩き出した。





ふと夏の事を思い出す。
隣を歩くオズにわざと肩をぶつけてこちらを向かせた。
「そういえば、今回は変な打ち合わせしてないだろうな?」
別行動なら別行動と最初から知っていれば余計な心配をせずに済む。
もうあんな事はごめんだと暗に伝えると、オズはうーんと首を捻りながら答えた。
「さすがに冬だと外は寒いからなぁ。お前に風邪ひかせたくないし」
「バカ」
聞いたのはそういうことじゃない。
後ろから頭を叩いてやるとオズは嬉しそうにそこを撫でた。
それに、と続けられる。
「二人っきりの時間はちゃんと確保してあるしな」