プロポーズ
「セス」
戴冠石の中からセスが帰ってきた。
もう言いたいことを言えずに後悔するのは嫌だ。
そう思って好きだと伝えたら笑ってくれた。
一緒のベッドで寝てくれた。
オレに抱かれてくれた。
ずっと側にいてほしいと言ったらはいと頷いてくれた。
この幸せをもっと確かなものにしたい。
「結婚してください」
結構な覚悟と勇気を振り絞ってのプロポーズ。
セスは驚いたように目を丸くしてオレを見上げた。
返事を待っているうちに、どんどん顔が険しくなっていく。
どうしたんだろう。
「まさか、あれだけ色々しておいて責任をとらないつもりだったんですか?」
「責任って……だからこうやって……」
「いや、あまりの認識のズレにちょっと愕然としてしまいました」
責めるように睨まれる。
だけどそれはすぐに力が抜けたように額に手を当てて項垂れる姿に変わった。
「……どういうことだよ」
「初めてあなたと寝た日。『ずっと傍にいてほしい』と言われて、僕は『はい』と答えましたよね?」
「ああ」
「僕はそれがプロポーズだと思ってたんですが」
セスが一旦そこで言葉を止めた。
大きく息を吐いて頭を振る。
今度はオレの方が驚きで何も言えなくなった。
「……道理で手続きを進める様子がないはずですね」
「そう、だったのか」
そうか。
こいつ、もうオレと結婚して良いと思ってたのか。
受け入れてくれてたのか。
セスの気持ちが嬉しい。
結果的にセスを待たせていたことが申し訳ない。
色んな感情が一気に湧いてきて混乱する。
ああ、でもこれだけはきちんと言っておかないと。
「わりぃ。今さらだけど改めてオレと」
「だから、僕はとっくにオーケーしてるつもりだったんですよ」
「ははっ!ありがとう!ありがとうセス!大好きだ!」
愛しさのままにセスを抱きしめる。
腕の中から呆れたようなため息が聞こえてきた。
背中に手がまわされるのを感じる。
「本当に今さらすぎますね」
「悪かったって。明日にでも役所に書類もらいにいこうぜ」
「不要です」
「え?」
「いい加減に待ちかねたので、今日僕がもらって来ました」
後でサインしておいてくださいねと続けられ、情けなくて頭を抱えたくなる。
本当はオレがきちんとしないといけないのに。
かっこわりい。
「あー…オレほんとにダメだな」
「そうですね。まぁ、そういうところも貴方らしいところも嫌いじゃありませんから」
セスが少し体を離すと背伸びしてオレの頬にキスをした。
お返しににっこりと微笑んでいる唇に自分の唇を重ねる。
「じゃあ今日一緒に書いて、明日二人で出しに行こうな」
「はい」
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