ユア青



軋んだ音がして顔を上げる。
見ると閉めていたはずのドアが少しだけ開いていた。
おかしいな。
スカーレットが煩いから閉めていたはずなのに。
不審に思ってる間もドアはゆっくり動き続けている。
おいおい王様の城でまさかのホラーイベントかよ。
すぐにハデスを出せるように構えていると、開ききったドアの向こうから現れたのは王様の人形だった。
一気に気が抜ける。
なんで勝手にふらついてんだ。
ヒューの奴、ちゃんと見とけよな。
溜息を吐きながら立ち上がると、人形がハッキリとオレに焦点を合わせて口を開く。

「――ルシアン」

数えるほどしか聞いたことが無い声に一気に気持ちが昂った。
なんだ。今日はあの日か。

「王様」

オレはいそいそと王様のもとに駆け寄る。
向かう先は王様の部屋のひとつ手前。
このためだけに整えられた空間に着いていく。
ヒューがいない日で良かった。



「――っあぁっ!!」
「この体のときは反応がいいようだね。こっちの方が好きかい?」

包帯が肌に擦れる感触にゾクゾクする。
右腕の無い身体に後ろから抱えられ、オレは全身を弄ばれていた。
起ち上がったオレのモノを撫でながら王様が耳元で囁く。

「ちが…いつもの…はぁ…王様の、体だと…っつ!壊さないように…」
「そうか。いいこだ」
「ん…」

頭を撫でながら口付けられる。
王様が人形の体に馴染むための調整として、この体の相手をさせられるようになりもう数回。
知らない男にされているみたいで、いまだにコレだけは慣れない。
まあ、それが逆に燃えたりもするんだけど。
ヒューがいなくて本当に良かった。
ただの騎士としての役目のひとつだし、王様のためだし、気持ちイイし。
でもあいつはあんまりこういうの好きじゃないだろうから。
適材適所ってやつだな。
絡みつく舌を追いかけながらぼんやりと考えていると、王様が急に唇を離した。
首を傾げるオレに、王様はブリューナクの男と同じとは思えないほどの凄惨な笑みで告げる。

「ルシアン、今日はもう一人いるんだ」

熱に浮かされた脳みそではすぐに理解できなかった。
……もう、一人?

「入っておいで」

王様の呼びかけにドアが開く。
立っていたのは白い髪に褐色の肌の男。

「王、これは――」
「早くこの体を上手に使えるようルシアンに協力してもらっていてね。ほら、だいぶ器用に動くようになったと思わないか?」
「あっ…ああっ…!」


王様の指が胸の尖りを潰すように摘み、思わず声が漏れる。
もともと無表情なヒューの顔が更に固くなった。
オレにしかわからないほどの小さな変化。
あーあ、知られちまったなぁ。

「もっと近くにおいで。そこではよく見えないだろう?」

まあバレちまったもんはしょうがないけど。
せめて堅物のヒューの気持ちが少しでも軽くなるように手を尽くすくらいはしてやるよ。

「ヒュー、勘違いするなよ。ムリヤリとかそういうのじゃないから。合意」

自ら足を開いて見せつけてやると、ヒューの目に怒りと欲情の色が生まれる。
王様もオレもヒューも独占欲が強すぎるんだよな。
板ばさみってつらいつらい。
まあどちらも完璧選べない以上、責任とってオレが悪者になってやる。

「ほら、早く来いって。ヒュー、オレをもっと気持ちよくしてくれ」