白青



(ある日のルシアンの日記)

○月○日
今日の王様は奥の部屋から出てこなかった。
ギターの弦が切れた。
ストックもなくなってた。
最悪。0点だ。




(同日のとあるメールのやり取り)

宛先: クロトーサイモン,ラヴィスカー
題名: 至急
本文:
ギターの弦とはどこで買うものなのか教えてほしい



               宛先: ヴァイスマン
               題名: Re:至急
               本文:
               普通に考えて楽器屋だろう


               宛先: ひゅーひゅー
               題名: Re:至急
               本文:
               アン兄に聞けば?






直接聞けるものならそうしてる。
そう心の中でつぶやき携帯電話を閉じた。
黒騎士の助言に従い楽器屋に訪れたものの、まさかこんなに種類があるとは思わなかった。
店員にどれが必要なのかと聞かれて逆にこっちが質問したいくらいだった。
結局、連れて行かれた棚に並んでいるものを全部一つずつ買い店を出た。

「差し入れだ」
「マジかー!助かった!ちょうど切らしちまったんだよ!」
「そう言ってたからな」

これなら間違いないだろう。
退屈そうに座ったままの青騎士に袋ごと渡すと、嬉しそうにごそごそと中身を探り出した。

「やっぱオレにはギターがないとな〜」
「そうだな」
「しかしお前よく種類とか……おい、ヒュー」
「なんだ」

青騎士が袋の中身を一つ取り出す。
封筒のように四角い袋。この中に丸められた弦が入っているらしい。

「コレは何だ」
「ギターの弦じゃないのか?」
「アコースティックギターの弦だ。オレのはエレキ」

地面に並べられていく四角いパッケージ達。

「コレも。コレも。ああ、コレもか。なんだよ全部アコースティックのじゃねぇか」

やはりオレにはどれも同じに見える。

「違うのか」
「違うんだよ」

青騎士ががっくりと肩を落とした。
つまり赤騎士の言ったことが正解だったわけだ。
子供のようにしょげている青騎士の姿に罪悪感が胸を刺す。

「最初から聞いておけば良かったな。控えるから必要なものを言ってくれ」

こっそり用意して喜ばせようとしたのが間違いだった。
期待させるだけ期待させて、余計なことをしてしまったようだ。
せめてもの償いに今度はきちんと青騎士が必要なものを用意しようと尋ねると、気の抜けた顏の横で手を振られる。

「あー…いいよいいよ」
「そうか」

どうやらオレは役に立たないらしい。
目の前に並ぶ証拠を思うと無理もないことだ。
どうやって埋め合わせをするか悩んでいると急に青騎士が立ち上がった。

「そんな顔するなって。お前が考えてるような意味じゃねぇよ」

近づいた距離のままへらりと笑う。

「クロトーが明日来る予定だ。少しここを任せて一緒に買いにいこうぜ」