アラセス初夜(R-15が努力目標)
寝るところがないのだと言われた。
戦いが終わったところで、街は壊れ、建物は崩れ、日常がすぐに戻ってくるわけではない。
オズがいなかったらオレもしばらく適当な廃墟に泊まり続けていたと思う。
何かの話のついでに、ユアンが退院したら一緒に住むつもりだと伝えると、いつのまにか二人暮らし用のアパートを用意されていた。
その手配は素直にありがたくオレはそこで暮らし始めたが、ユアンが退院するまではまだしばらく時間がかかるため今だけは部屋が余っている。
だから、さすがにユアンの部屋は貸せないけれどオレがユアンのベッドで寝て、お前がオレのベッドで寝ればいい。
住処を無くしたあいつにそう言って、うちに来るよう誘ったのはオレの方。
だけど、だったらオレのベッドで一緒に寝ればいいと、そう誘ったのはあいつの方だ。
ベッドに腰かけると、セスがオレの足の間に座り背中を預けてきた。
腕を回すとすっぽり胸の中におさまる。
セスが腕の中にいる。
なんという充足感。
抱きしめているだけで満足してしまいそうだ。
しばらくそのままでいたが、あまりにセスが動かないので、少しちょっかいを出したくなった。
手は繋いだままでいたいから仕掛けるのはもっぱら口で。
髪を咥えて引っ張っり、頬ずりをしてそのままキス。
顔をこちらに向けさせて、振れるだけの軽いものを何度も繰り返す。
唇だけではなく鼻の頭や目の横。おでこ。たまに指先。
セスからも同じように返される。
どちらが相手より多くできるか競争するように温もりを交わし、少し休憩。
目を合わせて笑いあう。
顔を見るのが久しぶりな感じがした。
改めてキス。
今度は深く。
舌の付け根から上あごまで全て確かめるようになぞる。
「はぁ…っ」
解放と同時に吐かれた息が可愛くて離した唇をまた合わせた。
抵抗なく開かれた口に舌を入れると、今度はあいつの方から絡んでくる。
堪らなくなって抱きしめた。
「セス」
「なんですか?」
好きだ。
「アラゴ」
「なんですか、アラゴさん」
好きだ。
「好きだ」
「はい」
好きだ。
「好きだって言ってんだろ」
「聞いてますよ」
好きだ。
「好きだ」
「僕もです」
好きだ。
「好きだ」
「好きです」
好きだと口にするごとに気持ちが昂っていく。怖いくらいだ。
どんどん強くなる腕の力を止められずに戸惑っていると、少し震えた声とともにオレと同じくらい強く抱きしめ返され、ようやく少し落ち着くことができた。
痛かったかな、ごめんな。
反動で訪れた脱力感に従いセスを抱きしめたままベッドに倒れると、仰向けになって苦しいと笑うのでそのまま横向きに体勢を変える。
シャツの隙間から手を滑り込ませ背中に触れた。
華奢だけどちゃんとした男の身体。
なのに、何で欲情しちまうんだろうな。
さわり心地のいい肌をゆっくり堪能していると、セスが内股を擦り合わせるように身じろぎして嬉しくなる。
なんだ、コイツも一緒か。
むしろコイツの方がすごいよな。よくもオレなんかに
「刑事さん」
「アラゴ」
「今、変なこと考えたでしょう。そんなの『刑事さん』で十分です」
「…わり」
「わかったならいいです」
今のはオレが悪かった。
謝ると怒った表情を一瞬で消してすり寄ってくるのが可愛い。
頭をがしがし撫でながらわざとらしく言ってやる。
「そうだよなー。セスはオレのことが大好きだもんなー」
「何言ってるんですか今更。アラゴさんだって僕のことが大好きなくせに。さっき好き好き連発してたのは誰ですか」
「オレだよ」
「…照れない人ですね」
呆れたように笑われて、その余裕を崩したくなった。
「なぁ、セス。変なことってこういうことか?」
はだけたシャツの上から胸の突起に噛みつき、同時に中心を撫でる。
「…ぁッ…!」
少し強く揉んでやると弾かれたようにビクビクと身体を跳ねさせながら距離を取ろうとしたので、再び抱きしめる力を強くした。
逃がすわけねぇだろ。
「はぁ…っ…も…いい加減、焦らさないでくれませんか?」
「んー…なんかもったいなくて」
目を潤ませたセスの非難に正直に答えると、首筋に顔を寄せられ囁くように言われた。
「…僕は早くアラゴさんを感じたいんですよ」
「言うじゃねぇか」
体中の血が一か所に集まるようなゾクリとした感覚。
後悔するなよと最後の理性で忠告はした。
そして長い夜が始まる。
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