01.
俺の、初めての聖守護隊としての任務だった。
「オズ。ちょっと出張しないといけないんだが一緒に来てくれるか?お前が来てくれると助かるんだ」
千人長にそう言われて。
いつも聖守護隊の寮舎においてきぼりの俺が任務に連れて行ってもらえることと、俺が力になれることがあるということ。
それが嬉しくて一も二もなく頷いた。
任務の内容なんてどうでもよくて、ただあの人と一緒にいられるだけで良かった。
出発は明日だなんていきなりもいいところだったけど、急いで荷物をまとめて千人長のもとに走ったら、置いて行ったりしないからとひどく笑われた。
「俺は挨拶に行ってくるから、お前は適当に遊んできなさい」
『お前が来てくれると助かる』
その言葉に舞い上がって連れてこられたのは簡素な住宅街だった。
俺たちの間では珍しい話でもないがパッチマンに襲われた家族がいて、それでも珍しいことに生き残った子供がいるらしい。
千人長の仕事はその双子の監視と護衛。
パッチマンが生き残りを狙って襲ってきたときの保険のようなものらしい。
具体的には対象の家が見える場所にベースを構えて見張ることになるんだけど、千人長みたいなおじさん一人で潜入するよりは、俺みたいな子供と一緒に住んだ方が怪しまれない。
俺がいる理由はただそれだけだった。
正直がっかりだ。俺じゃなくても子供だったら誰でも良かったんだ。
まぁ、聖守護隊に俺以外の子供なんて殆どいないけど。
でもせっかく俺が、俺がようやく役に立てると思ったのに。
期待外れも甚だしい。
沈んだ気分で公園を歩いていると見知った顔がベンチに座っていることに気づいた。
知り合いではない。千人長の護衛対象の一人だから俺も写真だけは見せられていて一方的に知っている顔だ。
こいつが、ねぇ。
「なぁ、お前何してんの?」
「あ?お前誰だよ」
「オズウェル・ミラー。今日引っ越して来たばっかりで友達もいないから暇なんだ」
「……アラゴ・ハント。引っ越してきたばっかりで暇なわけないだろ。荷解き手伝えよ」
これが出会い。
それから、話している間にアラゴを迎えに来たユアンに紹介してもらったり、二人を夕飯に誘ったり、親しくなってからはアラゴからパッチマン襲撃の件を打ち明けられたり、
一時は4人で一つ屋根の下暮らしたこともあったけど、それでもそんな時は長くは続かなかった。
ここから離れた遠い土地で被害者がでて、パッチマンは生き残りに興味を失い二人は安全になったと判断された。
二人が安全なら俺たちがここにいる意味はもうない。
それどころか他に危険にさらされている仲間たちを一刻も早く援護しにいかなければならない。
そんな理由で俺の初任務は1か月も経たないうちに完了した。
俺の初めての聖守護隊としての任務。
ハント家の双子の護衛、の手伝い。
それが俺の最後の聖守護隊としての任務に深く関わることになるとは、この時知る由もなかった。
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