夏祭り(学パロ)続き/アラセス



「アラゴさん…!僕、足がちょっと…」

背中を見失いそうになりアラゴさんの浴衣を掴む。
振り向いたアラゴさんは驚きに目を開いた。
それもそうだろう。
目の前の僕の息は乱れて、たぶん顏は赤い。浴衣も崩れてしまった。
我ながらひどい状態だ。

「すいません…草履、走り慣れなくて…」
「わ、わりい!」

もう少しだけスピードを落としてもらえませんかとお願いすると、慌てた様子で謝られた。
足を止めてもらえたことにほっとしてもう一つ訊いてみる。

「帯も緩んできちゃったので一度着付けしなおしていいですか?」
「お前、自分でできるの?」
「はい、アラゴさんに浴衣姿見せたくて頑張ったんですよ」
「じゃあどっかトイレとかで」
「別に女の子じゃないんですし、その辺の少し外れたところで構わないです。一応アラゴさん見張っててくれますか?」
「お前がそう言うならいいけど…。」

いまいち納得いかない様子のアラゴさんを押し切り、薄暗い林の中に入る。
少し通りを逸れただけなのに、途端に賑やかさが急に遠くなって別の世界みたいだ。

「この辺ならいいですかね」

ある程度進んだところで止まり、人目の無いことを確認して帯の結びを解いた。
一気に呼吸が楽になり息を吐くと、咎めるような声が飛んでくる。

「おいセス!」
「なんですか?」
「脱ぐならちゃんと言えよ!オレあっち向いてるから!」
「見てても構いませんよ。この際だから着付けの方法お教えしましょうか?」
「いい!」

後ろを向いたままボソボソと告げられた内容はさっきとは別の意味で息を吐きたくなるものだった。

「セス、お前無防備過ぎ。オレも男なの。今の状況わかってんのか」

本当にこの人はもう。

「アラゴさんこそ無自覚過ぎです。状況を分かってないのはどっちですか。男だって言うなら僕に全部言わ――」

『せないで下さい』
続く言葉は唇ごと奪われた。
衝撃で開いた隙間から舌が押し入ってくる。

「…っはぁ・・・んっ…んんっ…!」

息が解放されたかと思うとそのまま首筋を辿り耳の中まで舐め回される。
水音が直接脳に響くようでゾクゾクする感覚に首を竦めた。
弄られつくし離された途端、力が抜けて持っていた帯が地面に落ちる。

「そこまで言うなら覚悟できてるんだろうな」
「は…ぁ…まだ、何か、言わせる気ですか?」
「もう黙ってろ」

再び口を塞がれると今度は胸の尖りを刺激される。
摘ままれたり引っ張られたりするたびに声を上げてしまう。
ただの体のパーツがこの人に触られるだけでどうしてこんなに感じてしまうのか。
胸を弄っていた指先は徐々に下に動き、起ちあがっていたそこを大きく撫でされて体が震えた。

「っん…!あ、あぁ…っ!」

背中の方に手を回され、後ろに指を入れられると痺れるような感覚が背筋を走る。
少し乱暴な手つきでぐちゃぐちゃと掻きまわされる。もう訳がわからない。
されるがままになっていると急に指を抜かれ後ろを向かされた。

「ちょっと、痛いかも。でもこれ以上我慢できねぇから、ゴメン」

いい。早く繋がりたい。
喘ぐだけで精一杯の形を成さない言葉の代わりに必死で頭を動かす。
縦に振ったのか横に振ったのか分からない。
けれど伝わったみたいだった。
うなじにキスが落とされると熱い塊が押し入ってくる。

「はぁっ…」

言われた通りキツイ。
それでもこれからもたらされる悦びを期待して僕の中は入ってくる熱を締め付けようとする。
意識して力を抜くと一気に押し込まれた。
その衝撃だけで一瞬意識が飛ぶ。

「あああぁっ!」
「っ…動くぞ」
「あっ…あぁっ…あ、らご、さ…っ…!」

前後に突かれながら前を弄られると快感に涙が浮かんでくる。
貪りつくされるような動きにただ翻弄され、瞬く間に限界まで追い詰められた。
中の熱が膨らむのを感じ、ひと際強く抱きしめられる。

「っセスっ…!」
「あぁッ!」

名前を呼ばれると同時に熱い液体が注がれる。
目の前が真っ白になり、僕の放ったものがポタポタと地面に落ちる音がした。





少し場所を移し草むらに座り込む。
肩をくっつけて荒れた息を整えているとアラゴさんが片手で顏を覆った。

「あー…やっちまった」
「品の無い言い方しないでください」
「そういう意味じゃねぇ」
「わかってます」

遠くから響いてくる花火の音。
逸れた場合に、と決めた約束の時間はとっくに過ぎている。

「ユアンとオズに謝らねぇと…」
「それは気にしなくていいですよ。当初の予定からはズレちゃいましたけど、元々途中から別れようっていうのはあの男と話してあったんで」
「は!?……ああ、オズか」

妙に納得した様子でアラゴさんが頷いた。

「じゃあユアンは大丈夫かな。花火楽しみにしてたから良かった」
「気がかりは無くなりましたか?」
「……半分」
「半分?まだ何かあるんですか」
「いや、お前と花火見たかったなーと思って」

ま、来年もあるかと苦笑するアラゴさんに思わず抱きつく。
本当に、本当にこの人はもう。

「帰りにコンビニで小さな花火を買いましょう。一緒にしましょう?」

今日最後のお願いをすると、満面の笑みが返された。
夏の夜は短いけれどまだ終わらない。