ひもぱん(オズユア)
「はいオミヤゲ」
ソファーでくつろいでいたオレの隣にオズが腰を下ろす。
丁寧にラッピングされた薄い箱を渡され、不思議に思いながらも包みを開いた。
「下着…?」
中から出てきたのは左右を紐で結んで止めるようになっている女性用の下着。
経緯がまったくわからないため、黙ってオズの説明を待つ。
「リオちゃんたちと会った時にアラゴのバカ話になってさ」
視線に促され、オズは楽しそうに口を開いた。
「コレを売ってる専門店に一人で下見に行った後、悪魔くんと二人で来て、試着してたヤツを穿いたまま店を出て行ったっていう愉快なエピソードを聞いてきた」
「……それはコメントに困るな」
今はもう妖精とかの話が通じるようになったから誤解は解けてるんだけど、と笑ってオズは続ける。
「それでたまたま帰りに悪魔くんに会ったから、後日談を訊いてみたんだけど『お前には関係ない』だってざ」
「相変わらずセス君と仲が悪いな」
「悪魔くんが一方的に敵視してくるんだよ」
「絡むのもほどほどにしておけよ」
「わかってるって」
手が止まっていたオレの代わりに、オズが箱から中身を取り出してオレの前に広げた。
指と指の間にピンと張られたそれを抜き取り、オズに返す。
前触れなく肩を抱き寄せられたので、そのまま勢いをつけて胸に体当たりしてみた。
硬い感触。
相変わらずズルイくらいにイイ体だ。
「で、お土産っていうのはオレにコレを穿けってことか?」
「いや別に。ただの話のネタとして買ってきただけだから。まぁ穿いてくれるなら是非見たいけどな」
寄りかかったまま尋ねると、予想外に軽く返されて逆に気が抜けた。
貰い物を何もせず放置しておくのも後味が悪いし、こんな機会でもなければ身に着けることもないだろう。
「一回だけだからな」
だったら勢いのせいにできる時に。
――と、オレがこう考えるのもオズの計算の内だろうな。
「マジで!?」
「穿いたまま外に行けとか走れとか言わないよな?」
我ながら甘いと思うが、こう喜ばれると悪い気はしない。
うんうんと頷くオズを残して隣の部屋に行き、着替えてから戻る。
「……なんでズボン穿いてるんだよ」
不服そうに唇を尖らせるオズに苦笑で返した。
「室内とは言えさすがにアレだけ部屋を歩くのはちょっと」
「それで、オレに脱がせてほしいって?」
「脱がせたいんだろ」
「わかってるじゃないか」
からかうとオズは否定もせずに、さらにオレを煽るように挑発してくる。
好意も欲も必要以上に隠さない。
こういうところが好きだ。
「――こっち」
手招きされて足の間に座ると、肩に顎を乗せて後ろから覗き込まれた。
ボタンを外してファスナーを下ろされる。
広げられた前から手を入れられ紐の結び目を弄る。
「ん…」
「どんな感じ?」
「…自分で穿いてみればいいだろ」
漏れた声に気づかないフリをしたオズが紐の端を引っ張って解く
「まぁ、そう言われるかと思って実はオレも穿いてみてたりするんだけどな」
「ははっ!」
あまりの用意周到さに堪えきれず声を出して笑ってしまった。
結局行き着くところは変わらない。
「そんなに笑わなくてもいいだろ?確かめてみるか?」
「確かめてほしいって?」
「確かめたいんだろ?」
顔を見合わせ唇を重ねると、お互い同じ表情をしていることに気づく。
悪戯の打ち合わせをしているような排他的な楽しさ。
オズが押してきたのかオレが引き寄せたのか分からないまま、二人でもつれあいながらソファーに倒れこんだ。
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