不意打ちでどきっとさせられた刑事さん(アラセス)のおまけ
「そこにいるのか!?」
「いませんにょ」
ん?平然とした顔で人をひっかけやがったセスに普段であれば怒りが沸いてくる。
だが、今はそれよりも何かおかしいところがあった。
違和感の原因を確かめようとセスの顔を見つめる。
「…なんですか」
不機嫌そうな顏で静かに睨まれた。
オレの聞き間違えだったんだろうか。
「……いや」
「歯切れが悪いですね。言いたいことがあるならどうぞ」
「………セスお前、最後」
散々悩んだ末に口を開くと、全部言い終わる前にバッサリ遮られた。
「噛みましたけど。それを指摘することに何の意味が?」
あ、そうだよな。にょって言ったよな。
偉そうないつもの調子で言われてある意味ほっとする。
イライラするのは変わらないがこっちの方がまだ安心できる。
「そんなことを言ったところで刑事さんがここに居もしにゃっ!?」
一瞬で凍りついたようにセスの動きが止まった。ああ…。
セスはそれ以上何も言わず口を閉じた。
オレから見てもわかるくらいに唇に力が入ってる。
両手を握りこんで小さく振るわせているのは、何かを必死で堪えているらしい。
「……し、な、い、オルクを…!」
なんとか途切れ途切れに言葉を繋ぎはじめたが、段々頭が下がっていき、ついには黙り込んでしまった。
かける言葉が見つからない。
ここまで気まずい沈黙は初めてかもしれない。
怒鳴り合いでもしてたほうがまだマシだ。
空気に耐えきれず、耳まで赤くして俯いているセスの肩を思わず叩いた。
「……まぁ、その、気にするな」
弾かれたようにセスが勢いよく顔をあげた。
恥ずかしさのせいか目じりに薄く涙が浮かんでいる。
うわ、その顏はヤバイ。
オレまでつられて赤くなっちまうじゃねぇか。
真正面から悔しそうに睨みつけられたが、迫力なんて全くない。
「同情ですか!?そんなものは結構です!今日は調子が悪いので失礼します!」
逃げるように走り去っていく後姿。
少しでも可愛いと思ってしまったオレが一番調子が悪いのかもしれない。
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