十年後アラセス



復興十周年にあわせて開かれた記念パーティー。
出席するつもりなんて全くなかったのにオズに無理やりつれてこられた。
部屋取っておいたからと押し込まれたのは、よくわからない高級ホテルの上のほうの階。
夜景はさすがに綺麗だったけど、結局すぐにカーテンを閉めてベッドに入った。
セスを抱きしめればどこでも同じだ。

「にぎやかでしたね」
「ああ。もう十年なのか。なんかあっという間だったな」
「最初にあなたを見つけた時は、まさかこんなに長い付き合いになるとは思っていませんでした」
「オレだってそうだ」
「刑事さんはあんな事をされておきながら、よくも僕のことを好きになりましたね」

枕にしているオレの腕に爪を立てるようにしてセスが人差し指を押し付けてきた。
薄く残った線を撫でてはまた新しい跡をつける。
楽しんでやがるなこいつ。
返事を待たずにセスが続ける。

「十年。――ねぇ、刑事さん。一つの区切りにするにはいい機会だと思いませんか?」

オレを見上げてくる妙に真剣な目。
まるで別れを告げるような口ぶりに、オレはセスと額を合わせた。
わざと勢いをつけたから少し痛かったはずだ。

「またそうやって変な言い方しやがって」
「あれ?引っかかりませんでしたか」

バカ。
この程度で騙されるか。

「だってお前、もうオレから離れる気ねぇだろ」
「分かってるじゃないですか。嬉しいです」
「なんだよそれ」
「昔はよく『オレなんて』とか『オレなんかじゃ』とか言ってましたよね」

くすくすと笑いながらセスがオレの胸に頭を擦り付けた。
本当に変わり身の早い奴だ。

「刑事さんにわからせるの大変だったんですよ。我ながらよく頑張ったと思います」
「お前がわかりにくいことばっかり言うから悪ぃんだよ」
「僕がいなくなったらどうしよう、なんて的外れな心配して怯えてる刑事さんも可愛かったですけどね」
「うるせぇ」
「あ、ただ一つ。あの男に相談していたことについては少し腹が立ちました」
「……お前は変わらねぇよなぁ」

自分では結構上手く隠していたつもりなのにバレていたことに驚く。
感心しながら言うとセスに髪の毛を引っ張られた。
少し不機嫌そうに眉を寄せている。

「変わりましたよ。自分でも驚くほど変わりました」
「そうか?」
「全部あなたのせいです。悪い気はしませんが」
「ふーん。じゃあオレも変わったかな?」
「ええ、そうですね。あなたも変わったと思います」
「自分じゃわかんねぇや」
「わかりやすく教えてあげましょうか?」
「ああ、教えてくれよ」

セスの手が頬に触れた。
引き寄せられるままに唇を重ねる。
舌を根元から絡め取るような動きに、こちらからも合わせる。
軽く噛んだり、吸って反応を楽しんでいると、セスがゆっくりと顔を離した。

「キス、上手くなりましたね」

セスがオレの唇を撫でる。
それだけでゾクゾクした感覚が背中を走った。

「……ああ、そういう事か。だったらお前だって。中、すぐにトロトロになるだろ」

抱きしめたまま背中のほうから手を伸ばし、先程までオレのモノが入っていた場所に触れた。
入り口をぐるりと指でなぞるとセスが体を震わせる。

「刑事さん、あんまりやると――っ!」
「いいから」
「よくありません。明日もあるんでしょう?」
「そうだな」
「どうしたんですか?嬉しそうにして。明日も面倒なことばかりだっていうのに」
「いや、明日もお前と一緒だっていうのが改めて幸せなと思ってさ」

柔らかな肌に手を滑らせる。
少し体温が上がってきてるな。可愛い。
さっき付けたキスマークが少し薄くなってる気がして、もう一度そこに跡を重ねた。

「んっ、刑事さん、だからダメですって」
「大丈夫。明日も一緒だから、オレが起こしてやるよ」
「……もう。仕方ないですね。寝坊したら全部刑事さんのせいにしますから」

セスが呆れたように笑い、足をオレに絡めてくる。
誘うように反らされた首筋に歯を立てながら答えた。

「望むところだ」