sideE
その日の夜。
初めて見たオズの無防備な表情が頭から離れない。
冷静を越えて冷酷なまでに自分を律することが出来る男だということは短い付き合いでもよく分かった。
そのオズがあんな風に本音を漏らしたというのは、少しはオレに気を許してくれているということだろうか。
仕事の対象以上として見てもらえているのだろうか
気持ちの高揚に呼応したかのように体が昂り眠れなかった。
とは言ってもこの体の状態では自然と治まるのを待つしかない。
ベッドのなかでただただぼんやりと過ごしていると、こんな時に限ってオズが様子を見に来た。
「寝れないのか?」
「いや、大丈夫」
いつもなら嬉しく思うオズの訪問だが、今だけは早く出て行ってほしいという気持ちの方が大きい。
努めて平常心で応えたつもりだったが、人並み以上の観察力は誤魔化せなかったらしい。
憎らしいほど見事に足音を消した歩みでオズがベッドの横へ立つ。
「ああ…そういうことか。ユアンの体もだいぶ元気になってきたってことだな」
片手じゃ難しいだろと言われ、熱をもっていた部分に手を伸ばされた。
「なっ…!」
「男同士なんだから気にすんな」
寝間着のズボンを下ろされ、大きな手のひらで包まれる。
何度か擦られると足の間に頭を埋められた。
生ぬるい感触と自分のものではない体温に呼び起こされる快感。
慣れたような舌遣いにあっという間に追い立てられた。
「オズ、もう、やめろ…!」
「我慢すんなって」
咥えられたまま喋る動きがそのまま刺激になりオレを追い詰める。
先を強く吸われると限界だった。
「う…ッ…あァッ…!」
放った反動でバランスを崩し、ベッドに倒れそうになったところをとオズに支えられる。
鍛えられ、がっしりと筋肉のついた身体。
オレ程度の重さではびくともしない腕。
動く気力もなく抱えられたままの体勢で呼吸を整えていると、ちょうど頬に戦いの時に貫かれたという右の脇腹があたった。
触れたくなって、傷に障らないように表面だけをそっとなぞる。
オズは一瞬だけ身体を振るわせたが、結局何も言わなかった。
「…痛かったか?」
「痛くないわけあるか」
支えられた手に体重を預けたまま腕を伸ばしてオズの首にまわす。
そのままこちらに引き寄せると、思った以上に距離が近づく。傷だらけの顏。
オレやほとんどの市民が本当の姿を知らないままに終わった戦い。
その間にこの男が犠牲にしてきたものを思うと無性に泣きたくなった。
「どうした?」
「なぁオズ」
抱きつくことで顏を隠し、一度だけと決めた問いを投げる。
「オレはアラゴの替わりになるか?」
一拍と置かずに返された。
「なるわけないだろ」
「そうか。変なこと聞いて悪かった」
「二度と訊くな。ああ、でも訊くなら何度でも言ってやる」
優しい声。
「オレが今一緒にいるのはお前だ、ユアン」
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